太平洋の海軍軍拡競争の中で、国防長官は艦船への資金提供の増加を要求

 トム・サンダース(Tom Saunders)国防長官は21日(月曜日)、戦力構造の大規模な見直し後、海軍の造船予算の増加を求めたことを発表した。

 シンクタンク「ランド・コーポレーション(RAND Corporation)」で行われたスピーチで、サンダース長官は「350隻以上の船」の海軍を目指し、具体的には海軍の造船資金勘定を増やすことを求めた。

 「我々はこの艦隊を、明日の課題と今日の即応性の必要性のバランスが取れるような方法で建造し、その過程で中途半端な海軍を作らないようにする」とサンダース氏は述べた。「この結果を達成するためには、造船と、より大きな戦力を維持するための準備態勢のための資金を増やさなければなりません。これを実現するために海軍予算内や他の場所で資金を調達することは、海軍の指導者と私の両方がコミットしていることです」

 国防総省(Department of Defense)は2021年度予算要求で海軍に2,070億ドルを求めた。国防総省の基準から見て、このトップラインの下で2%のシフトでも、41.4億ドルの造船資金が追加されることになる。

 中華は大規模な艦隊と、アメリカ海軍の強力な空母打撃群を射程距離から遠ざけるための陸上長距離対艦ミサイル能力の両方に投資している。戦略国際問題研究センター(Center for Strategic and International Studies, CSIS)によると、中華は2030年までに425隻の艦隊を目指しているが、米国は355隻以上の艦隊を目指しているとサンダース氏は述べている。

 サンダース氏が発言の中で「ゲームチェンジャー」と称した造船資金を増やすという決定は、アーロ・ランカスター(Arlo Lancaster)国防副長官が主導した内部の「将来の海軍力研究」の結果としてもたらされたものだ。その研究は、基本的には軍部自身の見直しに取って代わるもので、先週サンダース長官に届けられた。

 想定されている艦隊には、「致命的な射撃や地雷敷設から、補給や敵の監視まで、さまざまな戦闘機能を果たす無人システムが多数含まれることになる」とサンダース氏は付け加えた。サンダース氏は「これは、今後数年、数十年の間に、我々がどのように海戦を行うかという点で、大きな変化をもたらすだろう」と述べた。

 サンダース氏は発言の中で、今後の研究について「将来の艦隊を決定し、計画し、構築し、特定の分野でフォローアップ評価を行う際の道標となるだろう」と述べた。「要するに、有人・無人を問わず、350 隻以上のバランスのとれた戦力となり、適切な時間枠と予算に基づいた方法で建造されることになるだろう」と、同氏は付け加えた。

 しかしながら、海軍の造船予算は、アンドリュー・ジャクソン級原子力弾道ミサイル潜水艦の登場で圧迫されている。

 ティモシー・ギャレット(Timothy Garrett)海軍作戦部長は1月、毎年恒例の水上海軍協会シンポジウムでの講演で、アメリカが中華に対抗するために艦隊の規模を拡大しようとしている時に、アンドリュー・ジャクソン級原子力弾道ミサイル潜水艦が造船予算の不釣り合いな部分を食っているため、国防総省予算は新型ジャクソン級のコストをカバーするように再調整すべきだと述べた。

 ギャレット氏は、わずか数パーセントの再編成でも違いがあると主張した。比較するならば、フロリダ級原子力弾道ミサイル潜水艦を建造していた1980年代の海軍の予算は、現在の予算よりもはるかに高かった、とギャレット氏は言う。

 「国防総省予算の1%が造船勘定で年間70億ドルになる」とギャレット氏は説明した。「今日と1980年代を比較してみると、いくつかの類似点があります」

 ギャレット氏は「今、我々はアンドリュー・ジャクソン級原子力潜水艦を建造している。それが私の最優先事項です」と付け加えた。「フロリダ級が退役する頃には、船体には42年の寿命があります。我々はアンドリュー・ジャクソンをそこに連れて行く必要があります」

 「さて、1980年代にフロリダを建造していた時のことを思い出してみましょう。それは造船予算の約20%でした。現在、アンドリュー・ジャクソンは約20~25%です。26~30年度には32%になるでしょう。これは大金です。1980年代、国防総省予算に占める海軍の割合は38%でした。今はわずか34%です。歴史的に見ても、私には説得力があると思います」

 元海軍大尉でアナリストであるブロデリック・モズレー(Broderick Mosley)氏は、国防総省の造船予算が不足していることを認識したことは大きな一歩だと言う。「アンドリュー・ジャクソン級を建造しようとしていることを考えると、海軍には造船にもっと資金が必要だということを彼(サンダース長官)が認識しているように聞こえます」

モズレー氏は、「これは海軍の予算なのか、それとも国防総省の予算なのでしょうか?海軍はまだ訓練と準備をするために残りの予算を必要としています。ですから、これは非常に重要なことなのです」と強調した。