ワシントン州の核廃棄物タンクに汚染物質漏洩の可能性

 エネルギー省(Department of Energy)は5日(水曜日)、ワシントン州にある第二次世界大戦中に作られた地下核廃棄物貯蔵タンクが、汚染された液体を地中に漏らしている可能性があると発表した。

 ハンフォード核保留地(Hanford Nuclear Reservation)で核兵器用プルトニウムを製造した際に出た廃棄物が漏れているとみられるタンクは、これで2つ目で、1つ目のタンクは2013年に発見された。ハンフォード核施設にある149基の単層式貯蔵タンクのうち、さらに多くのタンクが漏出している疑いがある。

 今回最も漏洩が疑われているタンク『B-109』には、12万3,000ガロン(46万5,000リットル)の放射性廃棄物が貯蔵されている。この巨大なタンクは、最初の原子爆弾を製造したマンハッタン計画(Manhattan Project)で建設されたもので、1946年から1976年までのハンフォード事業からの廃棄物を受け入れていた。

 州南東部のリッチランド(Richland)近郊にあるハンフォード核保留地は、1945年に日本の長崎に投下された原爆を含む国の核兵器用プルトニウムの約3分の2を生産しており、現在では全米で最も汚染された放射性廃棄物サイトとなっている。

 広大なハンフォード・サイトでは、数十年前から数十億ドル規模の環境浄化が行われている。

 ワシントン州エコロジー省(Washington State Department of Ecology)と連邦環境保護庁(Environmental Protection Agency)は、タンクが漏れている可能性が高いと水曜日に通知を受けた。

  エネルギー省のスポークスマンであるアン・シュミット(Anne Schmidt)氏は、「ハンフォードの労働者や一般市民の健康や安全に対するリスクは高まっていない」と述べた。「この地域の汚染は新しいものではなく、労働者や市民、環境を守るための緩和策が何十年も前から実施されています」

 タンクは以前、ポンプで汲み上げられる液体を空にしていたため、内部には少量の液体廃棄物が残っていたという。この地域のシステムは、地下水に到達する汚染物質を捕捉・除去し、コロンビア川の保護を確実にしている。

 タンク『B-109』からの漏れは、2019年3月に、その液体廃棄物のレベルが少し下がっているように見えたことから、最初に疑われました。毎月のチェックでは、2020年7月までレベルは安定していたが、再び低下が検出され、エネルギー省は調査を開始した。

 州のエコロジー省によると、タンクからは1日あたり約3.5ガロン(13リットル)が漏れているという。

 同省のモーガン・ヒューズ(Morgan Hughes)長官は、「ハンフォードのタンクから放射性物質や危険な化学廃棄物が漏れるのは、いつでも深刻な問題です」と述べ、「時間が経てば経つほど故障や漏れが続くハンフォードの老朽化したタンクに対処するための資源が、非常に必要であることが浮き彫りになりました」と付け加えた。

 シアトルを拠点とする監視団体「ハート・オブ・アメリカ・パシフィック(Heart of America Pacific)」は、今回の漏洩により、数百年から数千年に渡って危険な放射性廃棄物が放出されていると指摘している。

 一方で、ヒューズ氏は「高レベル放射性廃棄物のタンクからの小さな漏れなどありえない」と噂を否定した。